「ご心配どうも」
「そうだ、春哉にするなら俺にしない?友達から恋人に昇進し……」
「あんたみたいなチャラい男は死んでもごめんだから!!」
天然タラシらしい春哉くんという男子よりずっと、自覚ありのタラシのが最低だ。
結局お礼を言いそびれたまま、澪の腕を引いてその場を後にする。
「汐音って本当に学習しないよね」
二人の姿が完全に見えなくなった後、ようやく口を開いた澪の言葉が心にグサリと刺さる。
どうやら私の怒鳴りにも近い叫び声が、澪や春哉くんにも聞こえていたようだ。
「わかってるけど、霧谷が余計な一言を……」
「それでも助けてくれたんだよ?あのままだと無理矢理どこかに連れていかれてたかも」
「ぐぬぬっ……」
それは認めざるを得ない。絡んできた他校の男子は強引な上に乱暴で、力強く私の腕を掴んできた。
あれを振り払えというのは無理な話である。
「また明日にでもお礼を言うんだよ?」
「……絶対?」
「絶対!」
「うー……嫌だ」
嫌だけれど、確かにお礼を言うべきだ。かなり嫌だけれど、ここは素直になるべきである。



