愛恋のキス




「そんなに元気になったらもう大丈夫だね」

「こんなに俺の感情を揺さぶるのは藍原ちゃんぐらいだからな」


 揺さぶるって、それはこっちのセリフだ。
 それに霧谷の中には、私よりもずっと大切で忘れられない人がいるだろうに。


「……ねぇ、もういいでしょ。そろそろ勉強始めたいんだけど」

「んー、まだ離したくないって言ったら?」
「じゃあ、まだこのままで」


 自分で霧谷のことを考えておきながら、勝手に傷ついてしまうなんてバカらしい。

 そう思って吹っ切れたらどれほど楽だろうか。霧谷と一緒にいるたび、胸の苦しさは増すばかり。


 だから正直、今は霧谷から離れたくなかった。浮かない顔を霧谷に見られたくなかった。


「……へぇ、藍原ちゃんが珍しい。このままベッドに行く?」

「行きません!」


 さすがにこのまま流されるわけにはいかない。残念と口にした霧谷だったけれど、全く残念そうには見えなかった。