愛恋のキス




 恐る恐る霧谷と向かい合って座ったけれど、彼は私を見ようとしない。

 参考書を見ているフリをしているのか、その瞳は一点を見つめたまま動くことがなかった。


「……霧谷、二人とも帰ったよ」
「そうだな」

「また勉強再開するの?」
「……」


 霧谷が黙ってしまった。
 これほど不機嫌な霧谷は初めてで、対処法がうまく思いつかない。


 第一、霧谷が怒っている理由がいまいちわからないし……。


「……俺って結構嫉妬しやすいんだなぁ」
「え?」

 新たな発見でもしたように話す霧谷。嫉妬しやすい……ということは、今まさに嫉妬しているということだろうか。


「あー、イライラする」
「やっぱり怒ってるの?」

「かなり」
「どうして?」

「……藍原ちゃんのせいだな」


 全く心当たりがないのだけれど、突然怒りをぶつけられて困ってしまう。