愛恋のキス




「別に西山くんと一緒に行ってただけじゃない」
「じゃあ今度、俺と一緒に行こうぜ」

「あんた、いつも来るの早いでしょ。そもそも自転車通学でしょ」


 この間、二人で勉強していた時のことを思い出す。霧谷は自転車通学のようで、自転車を押しながら駅まで私と歩いていた。


「ほら、俺の時は嫌がる」
「嫌がるっていうか……」


 事実でしょ、と言いたかったけれど……今の霧谷が少し怖いと思ってしまい、それ以上なにも言えなくなった。


「あっ、二人ともそんなところ突っ立ってどうしたの?」

「……沙良」
「あれ、瑞樹?なんか怒ってる?」


 えっ、やっぱり怒っているの?

 私も気にはなかっていたけれど、まさか本当に怒っているなんて。


「……別に、俺は全然普通だけど」
「嘘だ〜。あっ、もしかして汐音が何かした?」

「いや、私は別に何も……!」


 心当たりはない……といえば嘘になるけれど。
 別に西山くんと霧谷に対する態度が違うのは前から同じである。

 今になってそんな不満気に言われても……という感じだ。