愛恋のキス




「藍原ちゃんの浮気者」
「ちょっ……いきなり何」


 西山くんと別れ、自分の教室に入るなりこれはきつい。

 霧谷が私のそばにやってきて、両頬をつねってきたのだ。力は全然込められておらず痛くないけれど、浮気者の言葉にこれは目立ってしまうではないか。


 幸い、教室にそれほど人はいないけれど……いつもより霧谷の行動が大胆で面倒な気がする。


「俺という相手がいながら、春哉と仲良さそうに登校してただろ」

「いや、変な誤解生むからやめてくれない?」


 あと離して、と続けて霧谷の手を払う。学校で堂々と触れるのはどうかと思う。

 怒っているフリをしているけれど、内心はドキドキしていたり。


「誤解生むようなことをしてんのは藍原ちゃんだろ」
「……?」

 ふと、霧谷の声のトーンが落ちたような気がするのだけれど……気のせいだと思っておく。