けれどいつもは澪と一緒に行っているため、彼とは挨拶をするくらいだった。


「西山くん、おはよう」

「おはよう。今日は一人なんだね。だから藍原さんを見かけてすぐに声をかけちゃったよ」


 まるで誤解を生みそうな言葉に、違う意味でドキドキしてしまう。

 ただでさえ西山くんは容姿で目立っているのだ、変な噂が立つのは御免である。


「うん、今日は一人なんだ」


 あえて後半の言葉には触れず、一人であることを素直に認めた。


「じゃあ隣、いい?今更だけどね」


 わかっている、わざとじゃないということぐらい。これが天然タラシという恐ろしい存在なのだ。

 優しく微笑む彼は、御伽噺に出てくるような王子様のようで、キラッキラと眩しい。