霧谷が切なげな表情を見せた後も、彼自身にこれといって大きな変化はなかった。
学校には毎日来るし、授業もサボらず寝ずに参加する。
2年に入って2回目のテストも安定に霧谷が1位をとり、私は万年2位の記録を伸ばし続けていた。
悔しいけれど、これが今の実力差だ。1位の人に教えてもらっている時点で負けたに等しかった。
「藍原さん」
夏休みが目前まで迫ったある日の朝。
いつもと同じ電車に乗って来ていたけれど、澪から先に行ってて欲しいという連絡が入ったので、学校の最寄駅の改札を通るなり人の流れに沿って歩いていた時だった。
優しく穏やかな声が私の名前を呼び、立ち止まって振り返るとそこには西山くんがいた。
元々西山くんは私と同じ時間帯の電車に乗ることが多いらしく、よく遭遇していた。