勝手に恋というものは、人を好きになるということは、幸せを与えてくれる思っていたけれど。

 こんなにも苦しいだけの恋も存在するのだと考えただけで、泣きたくなった。


「こう見えて結構反省してんだ、俺。藍原ちゃんに許可なくキスしたこと」

「……どこが」
「あと後悔もしてる」


 その言葉に対して私は何も言葉を返すことができなかった。

 代わりに胸が痛み、さらに苦しさが増す。


 後悔って言葉を使われて、傷つかない人などいるのだろうか。

 第一、勝手にキスしてきて勝手に後悔しているなんて意味わからないけれど。


 それに振り回されてドキドキしたり、胸が痛んで苦しんだりしている私も私だ。

 本当に、私って……。


「バカみたい……」


 一瞬で二人の間に流れる空気は変わり、気まずいものになってしまう。

 とてもじゃないけれど、この空気で、霧谷の隣で勉強を再開できる精神状態にはなれず、私は教科書やプリントを閉じて片付けるという選択をとった。