愛恋のキス




「……っ」

 また霧谷は切なげな表情で私を見ていたのだ。
 先程まで人をバカにするような表情だったり、真剣な表情をしたかと思えば、意地の悪い笑みに変わり。

 最後には、見ている私まで心が痛くなるほど、どこか苦しそうに顔を歪めるなんて。


 わかっている。また霧谷は忘れられない人を思い出したのだと。

 わかっているからこそ、余計に胸が締め付けられて息苦しくなるのかもしれない。


 最初は本当に嫌いだったし、霧谷が憎いとまで思っていたけれど。

 同じクラスになったのが良くなかった。霧谷と関わるほど、霧谷を知れば知るほど……引き返せない位置にまできていたのだ。


「……ごめんな」

 無理矢理笑って謝られたところで、余計に苦しくなるだけ。


 自分の心が揺れ、少しずつ傾いている。
 けれどその心に蓋をして、自分の気持ちを無理矢理隠したいと思った。

 きっと、自覚して受け入れてしまえば、今以上に苦しくなるだけ。