愛恋のキス




「今から俺の家、来る?」
「……ダメ」


 ギュッと目を閉じながらも、拒否の意思表示をする。思考が鈍る中、これ以上は流されてはいけないと必死で自分に言い聞かせた。


「……そんな顔されてさ、我慢できるほうがすごいと思うけどな」

「……っ」


 霧谷の指が唇に触れ、本当にキスされると思った。もし図書室にいる人たちに会話を聞かれていたらどうしようとか、見られていたらどうしようとか。

 いつのまにかそのような考えが頭から消え、ただ固まって目を閉じることしかできなかったけれど……。


 いつまでも唇の柔らかな感触が触れることなく、時間が過ぎていく。

 もしかして今、この表情すらも霧谷は楽しんでいるのかと思い、ゆっくりと目を開けたのが間違いだった。