愛恋のキス



 普段からこんな表情をしておけば、まだかっこいいと思えるのに。

 軽そうに笑ったり、意地の悪い顔をしたり。人を見下したり余裕そうな笑みを浮かべられるのも腹が立つ。


 黙っていれば霧谷は……。


「藍原ちゃん、聞いてた?」


 その声にハッと我に返る。真っ先に視界に映ったのは霧谷の姿。

 どうやら私はプリントではなく、霧谷のほうをじっと見ていたようだ。


「……あ」


 その事実に気づいた途端、頬が熱くなるのがわかる。

 見惚れていたとかそんなわけではないけれど。いつもと違う顔をする彼に意識がいっていたのも確かだ。


 どうしよう、かなり恥ずかしい。
 けれど霧谷のことだ、きっと意地悪な顔をして私に追い討ちをかけるのだろう。