愛恋のキス




 ここは遠回りをして図書室に向かおうと思い、その場を後にする。

 あれ、そもそも霧谷は図書室に来るだろうか。あのまま先輩たちとの会話に夢中になって、忘れるかもしれない。


 本当に帰ってやろうか。
 段々とモヤモヤが膨れ上がっていき、忘れようと思ったけれど頭から離れられない。

 わかっていたけれど。霧谷の顔が広いことぐらいわかっていたけれど、3年の先輩とも関わりがあったなんて。


「藍原ちゃん!」

 引き返して帰ろうと本気で悩んでいた時、背後から霧谷の大きな声が私の名前を呼んだ。


 彼は慌てて私のそばにやってきたようで、少し焦っているのが窺えた。

「……なに」
「いや、何となく追いかけないとって思って」


 その選択は間違ってなかったりする。
 多分、あのまま霧谷が話していたら、私は帰っていた自信がある。