愛恋のキス




 先程までやってしまったと反省していたけれど、その気持ちも何処へやら。また霧谷にきつく当たってしまう私がいた。


「そんなきついこと言うなよ」
「霧谷くん、友達待たせているんじゃないかな」


 私たちの後方で小さく笑いながら立っている男子生徒の存在を、霧谷は忘れているのだろうか。

 あえて指摘すると、彼は振り返って声を上げた。


「悪い春哉(しゅんや)!今から藍原さんの部屋に行くから!」
「はっ……?む、無理に決まってるでしょ!」


 まさか友達を捨てて私のところに来るとは考えておらず、焦りながらも無理だと主張した。


「瑞樹、嫌がってる子にそれは可哀想だよ」


 本気でついてくる気なのだろうかと思っていると、春哉と呼ばれた男子が私を助けてくれた。


「相変わらず春哉は堅いなぁ。別に良いだろ、これから仲良くなる関係を築くんだし」

「……」


 どこからくるんだその自信。私と霧谷が仲良くなれるとは到底思えないけれど。

 相手にしたら負けだと思い、二人が話している隙を見てその場を後にする。


「あれ、ジュース入れてこなかったの?」
「ごめん澪。緊急事態が発生して……」

「緊急事態?」
「あの男がいたの!霧谷瑞樹!」


 この数秒後、私の言葉を理解した澪が歌うのも忘れて笑い転げることとなった。