愛恋のキス

 


「……行こう」


 これ以上、余計なことは考えないでおこうと思い、私も教室を後にする。

 気づかないフリをしていながらも、相手の元に手を伸ばして近づこうとする私も私だ。


 明らかに心が傾いているというのに、その先にいくことを避けていた。



「瑞樹、そろそろ遊んでくれてもいいんじゃない?」
「本当だよね。3人で遊ぼーよ」


 図書室を目指して歩く中で、3年生の教室が並ぶ廊下を通ろうとした時だった。

 瑞樹という名前に反応して顔を上げると、とある教室の前で女の先輩二人に話しかけられている霧谷の姿があった。


 もしかして図書室に行くのではなく、先輩たちと話すために早く教室を後にしたのだろうか。


「……」

 何だろう、そう考えると胸の辺りがモヤモヤして、同時に苛立ってしまう。

 私は霧谷を待たせたらダメだと素直に図書室へ向かおうとしたというのに、他の女子と話していたなんて知りたくなかった。