愛恋のキス

 


「諦めてるんだよ。霧谷には何を言っても無駄だって」
「……ふーん。なら汐音も私と一緒に帰る?」

「それなら沙良も一緒に来てよ」


 さすがに帰るという選択は取れない。ふと霧谷の席に視線を向ければ、彼はもういなくなっていた。もしかしたらすでに向かっているのかもしれない。

 そのため、沙良も一緒に来てくれるといいのではと思った。


「んー、それは無理だよ。私がいても邪魔になるだけだろうし」

「全然邪魔じゃないから大丈夫」

「それは汐音が、でしょ。瑞樹に邪魔と思われるからなぁ。あとから文句言われそう」


 肩をすくめて笑う沙良を見て、何となく想像ができた。

 霧谷のことだ、軽い口調のまま沙良に文句を言いそうな気もする。