愛恋のキス




「なに、藍原ちゃんは俺の弱みを握りたいの?」
「もちろん。あんたを追い払える材料になるかもしれないから」

「追い払うってひどいな。そもそも藍原ちゃんは俺の弱み、握ってるはずだけどな」

「えっ……?」
「この前、俺の家に来た時に話しただろ?」


 そこまで言われて、ようやく何を指しているのか気づいたけれど。

 さすがに過去の話を弱みとして握り、扱おうとは思えない。そこまで私は最低な人間じゃないし。


「そんな人を苦しませるような弱みじゃなくて、もっとこう……」


 そこまで話して言葉に詰まってしまう。そもそも弱みって、相手が周りに知られたくないことを指すのではないか。

 それを握るということは、結局相手を苦しませることになるのでは……?


 あれ、今の私ってもしかして矛盾している?


「……ふっ、藍原ちゃんは優しいから人の弱みを握れないタイプだな」


 それが霧谷にも伝わってしまったようで、笑われてしまう。