ここは諦めて送ってもらう選択を取るしかないとどっていた時だった。
「必死になって、可愛い」
ふっと微笑んだ霧谷の声がひどく落ち着いていて、どこか彼に対して危険を察知する自分がいた。
「わかったから、送ってもらえばいいんでしょ」
「ん、決まり」
結局私が折れて終わりかと思いきや、霧谷は掴んだ手を離そうとしない。
「腕、細いなぁ。簡単に捕まえられそう」
「ちょっと、離し……」
霧谷の空いているほうの手が私の横髪に触れる。さらに耳へとかける動作をして、その瞳がじっと私を真っ直ぐに捉えてきた。
完全に油断していた。私に手を出さないと約束していた彼が、ここにきて大胆にも触れてきたのだ。
「手を出さないって約束したよね」
「嫌がることはしないとは言ったけど、手を出さないって約束はした覚えがないな」
「なっ……!?」
手を出さないと約束したから私は家に上がったのに、騙された。



