愛恋のキス




「恥ずかしくないよ」
「……え?」


 咄嗟に声を上げたのは、何ら脈絡のない言葉。ただこれは私の本音。


「苦しもうが泣こうが何も恥ずかしくない。無理されるほうが困るから、せめて今だけは自然体のままでいいんだよ」


 自業自得、自分が苦しんで当然。
 そう思っているのかもしれないけれど、苦しさを隠しきれていないのはきっと、色々と限界が近いのだろう。

 私の言葉を聞いて目を見張ったかと思うと、すぐに明るい表情が崩れていく。


「……じゃあ抱きしめるのはセーフ?」
「今日だけは」


 甘えるような言葉に震える声。
 私が肯定すれば、ぎゅっと苦しいくらいにきつく抱きしめられる。

 我慢して、自分の中にその気持ちを閉じ込めて、結果今の霧谷が出来上がってしまった。


 一人になって、この部屋に閉じこもる。1年の時もそんな生活を続けていたのだろう。