愛恋のキス




「触れられるのが嫌なら平気なフリしなよ」


 学校を休んで友達には心配をかけさせ、私が家に来たら「帰らないで」とか言って引き止めたくせに。

 デートの時もそうだ、切ない表情を見せるだけ見せて何も話さない。私にどうしろというのだ。


「……やっぱ心配してくれてんだ」

「別に。ただ私は何も知らないから、霧谷に何もできないでしょ」

「ううん、それは違うな。藍原ちゃんがこうして来てくれて、俺の隣にいてくれるだけで大満足」

「嘘つけ」
「本当だよ」


 テーブルの上を片付けて、一度部屋を出た霧谷。すぐに戻って来たけれど、飲み物の入ったコップを二つ手にしていた。


「はい、ただのお茶だけど」
「……ありがとう」


 素直にコップを受け取り、喉を潤す。

 一息ついて落ち着けたらいいけれど、自分の家ではない上に男の家ということで、どうにも落ち着かない。