愛恋のキス




 手土産も無しに家へ行くのは躊躇われたため、ちゃんと用意してから向かっていた。

 ただ、一人で行くことにはいまだに納得しておらず、周りに人がいないことを確認してつい叫んでしまった。


 本当は今すぐ引き返して帰りたいところだが、それでもしバレてしまえば後が怖い。

 万が一、穏やかな西山くんにすら嘘つきだと軽蔑したような目で見られたら……もう生きた心地がしないだろう。


「ここ、か」


 結局私は霧谷の住む家に来てしまった。

 まだ建築されてまもない綺麗な外観のアパートの一室が霧谷の家らしい。


 一度深呼吸をして心を落ち着かせてからインターフォンを鳴らす。

 数秒後、インターフォン越しから聞こえてきたのは3日ぶりに聞く霧谷の声だった。