愛恋のキス




「霧谷は来いって言っても来ないの?」

「グレてるわけじゃないし、『寝坊して行けなかった』の一言で終わらされるんだよね。軽く流されるっていうか……んー、もっとこう、瑞樹に刺激を与えられるようなことは……」

「あ、戸崎さん」


 私たちの学年の教室が並ぶ廊下を通っていた時だった。

 柔らかな声が沙良の苗字を呼び、私たちは同時に声をした方に視線を向ける。


「あっ、春哉」
「瑞樹は今日、学校に来てる?」


 声の主は西山くんだったようで、沙良が反応するなりすぐに霧谷の名前を口にした。

 どうやら西山くんも霧谷のことを気にかけているようだ。


「ううん、今日も来てないよ」
「これで3日連続か……最近週に1.2回しか来てないね瑞樹」

「そうだよ、本当にどうするんだって話」

「勉強面では大丈夫だろうけど、この調子で休み続けるのも良くはないからね」

「だから何か瑞樹にとって刺激になるものはないかなって考えてるんだけど……」


 二人して「うーん」と頭を悩ませており、本当に霧谷は優しい友達に恵まれているなと呑気に考えていると、ほぼ同時に二人が「あっ」と声を発して私に視線を向けてきた。