愛恋のキス




「ねぇ、ご飯はやめて帰らない?」


 このままデートを継続したところで楽しめない気がする。

 帰る選択を取ろうと思ったけれど、霧谷が再び私の手を強く握ってきた。


「んーん、今は1人になりたくない気分だから」
「このままご飯行っても気まずいだけでしょ」

「大丈夫。空気変えるのは得意なんだ」
「いや、どこが……」


 思わず突っ込もうとしたけれど、無理して笑おうとする霧谷を見るとこっちまで胸が締め付けられるような感覚になる。

 何が霧谷をそんな表情にさせているのだろう。


「……はぁ、わかった」
「えっ、いいのか?」

「いや、そんな驚かないでよ。霧谷が拒否したんでしょ」


 仕方なく了承すれば、なぜか霧谷は驚いたようで目を見開いた。


「まあ……そうだけど、てっきり帰られるかと」
「なに、帰ってほしいの?」

「それはダメ」
「じゃあ早く行くよ、お腹空いた」


 こんなこと、最初で最後かもしれないけれど、初めて私から霧谷の手を引いた。