愛恋のキス




「……藍原ちゃん、照れてる」
「う、うるさい……」


 やられっぱなしが嫌で睨みつけてやろうと思ったけれど、顔を上げた時、霧谷がどこか切ない表情を浮かべており、言葉を失ってしまう。


 その瞳は私を捉えていたけれど、私を見ていないような気がした。


 何というか、私ではない誰かを瞳の奥で捉えているような……重ねられているような。

 霧谷がこんな表情をするんだと、正直驚いた。


「見て、あれ」
「堂々といちゃついてんな……」


 私たちの間に沈黙が流れていると、人目を気にせずに立ち止まって恋人繋ぎをしながら見つめ合うバカップルと思われたのだろう、周りから視線を感じてヒソヒソと話されていた。