小さな勇気

1週間後の放課後。

私はロッカーの中の荷物を片付ける。

今日で、この教室に入るのは、最後……。


私は、この学校から離れることを決めた。

今朝、退学届けが受理された。

先生も、片づけを手伝ってくれる。

思い出なんて何もない、と思っていた入学式から今日までの間。

だけど、自分の想いはしっかりと詰まっていて。


実習で使った、髪の毛を切るシザーや国家試験に使われる道具。

座学で使った、教科書やノート。

苦しかったことも、辛かったことも沢山あった。

周りから見れば、自分に負けている、と思われても当然かもしれない。

それでも、私の気持ちを共にしてくれたのは、この美容師になるために必要な道具たち。


きゅっと、胸が締め付けられるように切なくなる。

もう、使われることのないだろう道具だけれど、私はこの道具を手放すこともないだろう。