全ての始まりは、二人がまだ高校生だった頃からだ。



授業が終わり、学校に賑やかなお昼休みが訪れる。奏多はお弁当と図書館から借りた本を片手に教室を出た。お昼休みの空気は好きじゃない。

奏多が入学した高校は、お金持ちがたくさん通うエリート高校で、周りにある人間は大企業の跡取りやお嬢様が多い。普通の家庭に生まれた奏多がこの高校に通うことになったのは、中学で始めたバスケットボールでスポーツ推薦がもらえたからだ。

周りにいるお金持ちと奏多は当然話が合わず、入学して半年経っても教室や高校の空気に馴染むことができなかった。普通の家庭の奏多はヴァイオリンやチェロなどを習っていないし、海外旅行にも行ったことがない。まともに話すこともできず、友達と呼べる人もいなかった。

「何で俺、こんなお金持ち高校に入学したんだろ……。みんなと同じ普通の学校に行けばよかったな……」

そんなことを呟きながら校舎裏でお弁当を食べる。パートをしている母が作ってくれた普通のお弁当だ。しかし、クラスメートから見れば貧乏人のご飯だろう。