そして時は現在に戻る。甘いひと時を終えた二人は、指を絡め合わせながら互いに寄り添っていた。大学を卒業し、互いに進路が決まってもこの関係は続いているのだ。この愛は変わっていない。

「愛華ちゃんの進路は家事手伝いだっけ?」

奏多が訊ねると、愛華は寂しそうな目をしながら「早く結婚しろってうるさいの。きっともうすぐ無理やりお見合いさせられる」と言いながら奏多の手に頬を擦り寄せた。

奏多が時計を見ると、もうすぐ真夜中を過ぎようとしているところだった。大人もきっと眠っている時間だろう。

「……告白してくれた時のこと、覚えている?」

奏多は愛華に訊ねる。愛華は「ちゃんと覚えてるわ」と言いながら微笑んだ。奏多はグッと拳を握り締め、緊張しながら口を開く。

「あの時は最初に「好き」って言ってくれたのは愛華ちゃんの方だったよね?だから、この言葉は僕から先に言うよ」

奏多はそっとポケットから小さな箱を取り出す。中には赤く輝くルビーの指輪があった。愛華の誕生石であるルビーを奏多は婚約指輪として選んだ。