【短】今夜、君と夜を待っている。






『明日から学校行けない……』


通話の相手は和泉、ではなく佐和。

真夜中にメッセージを送る必要もなくなって、二十二時を過ぎてから電話をかけた。

佐和も俺も、課題を進めるペンの音が話し声に混じる。


「遅刻しないように、早く寝ような」

『遅刻とかじゃなくて、行けないじゃない行きたくない』

「でも俺は佐和に会いたい」


ホームルームが終わるころに教室に戻った俺と佐和の微妙な変化は、お互いの相談相手を筆頭にクラスメイトのほとんどが察していたようだった。

佐和があんまり挙動不審になるから、表立って茶化すようなやつはいなかったけれど。


通話の向こうで佐和の戸惑うような声がきこえる。


メッセージのやり取りではなく通話になったから、佐和オススメの音楽を聴きながら、とはいかなくなった。

でも、ききたかった声がいちばん耳にきこえる。

三分、長くて五分程度の繰り返しではなく、二度と同じ響きにならない、このときだけの佐和の声。


『高平くんが眠るまで起きてるよ』

「いいよ、そんなに遅くならない」


だって、今夜は佐和の声がそばにいて、きっとよく眠れるだろうから。




【今夜、君と夜を待っている。】