本当は、ききたいことがたくさんある。
遡れば、はじめて高平くんがわたしにメッセージをくれた日のことから。
何の接点もなかったわたしに、高平くんは今では決まり文句となっている『起きてる?』という端的なメッセージを送ってきた。
「クラスのグループからじゃなくて、本当は直接佐和に連絡先をきこうと思ってたんだ」
以心伝心したように、高平くんはわたしたちの始まりから話をしてくれた。
真夜中ではなくて、もっと常識的な時間に送ろうとしていたこと。
躊躇ううちに吹っ切れて、夜中に突発的に送ってしまったこと。
怪しむわけでもなくすぐに返事が届いて、もともと眠りの浅い夜をわたしとのやり取りで過ごすようになったこと。
「毎日寝不足にさせられないから、水曜日か木曜日だけにして。夜中にばかり話してたから、普通に送るってどうすればいいのかわからなくなった」
「そんなの……何でもいいのに」
「何でもってなんだっけってなるんだよ」
『起きてる?』から始まるメッセージが当たり前になっていたのはわたしだけではなく、高平くんもそうだった。
斯くいうわたしも、夜中ではない時間に高平くんにメッセージを送ることなんてなかったから、あまり偉そうなことはいえない。
教室でのわたしたちは格好も交友関係も真反対で、直接話しかけることを躊躇っていたらしい。
お互いの世界は守られるべきだと。
優しいのか臆病なのかわからなくて、でも後者なら、夜の高平くんと重なる。



