真夜中、『起きてる?』から始まったメッセージのやり取りは夜明けのゴールテープを切る直前まで続いた。

もうすぐ夜明けだよ、と。ゴールテープ切っちゃう前に寝ようよ、と送ったら『スタートラインじゃないんだ』って返ってきたからさらに長引いた。


明日が休みなら、明け方まで起きていることも朝にくるまって眠ることも大歓迎だけれど、今日はこのあと学校がある。

水曜日、週の真ん中、相も変わらずA日課。

休んでしまおうかと考えながら目を瞑るけれど、なかなか寝付けない。


おやすみ、で終わった高平くんとのメッセージ履歴についついと指を滑らせながら、窓の向こうの夜明けから逃れるように体を反転させる。


毎週、水曜日か木曜日の夜中に高平くんは同じ決まり文句を送ってくる。

二分間の間を置いて、起きてるよ、と返すとそのやり取りは朝まで続く。


他愛のない話ばかりだ。お互いの趣味がまるきり違うから、好みの音楽から始まって漫画やテレビ、お弁当のおかず、意見交換みたいでおもしろい。

たとえば高平くんにオススメの曲を紹介すると、すぐに音楽アプリで検索して聴いてくれる。

選り好みをしない高平くんに遠慮せず、彼の好みと合致しないことを何となくわかっていても、わたしはこういうのが好きだよと伝える。