「いやーまさか、まさかあそこで、本当に工藤が決めるとは思わなかったな。」
「あそこから入れろって言ったの、キャプテンじゃないですか。」
「そうだったっけ?」
「そうですよ。俺、一瞬自分の耳、疑いましたもん。」
帰り支度をしながら、工藤くんと涼介先輩が言い合っている。
「でもすごいよ、工藤は。本当は期待してなかったけど。」
「ひどくないっスか?!」
私は思わず、理子と顔を見合わせた。
そして、2人で吹き出す。
なんて平和なやり取りなんだろう。
「俺、マジでひざ壊れるかと思いましたよ。」
「悪い悪い。でも、あんなシュートができるの、工藤しかいないしさ。」
練習試合の最終スコアは、58対59。
最後の最後で工藤くんが見事なスリーポイントを決め、青葉が勝利した。
あの時の興奮は、とうてい言葉では言い表せない。
「練習試合って言っても、すごい試合でしたよね。」
男子メンバーの一人が、言った。
他のメンバーも、それに続く。
「特に工藤くんとキャプテンがすごかったなあ。」
「2人のおかげで、俺たち、見せ場なかったもんな。」
「でも、本当にいい試合だった。」
涼介先輩が、満足そうにうなずく。
「皆、よくやってくれたよ。あの嵐が丘に勝ったんだ。今年は本気で、全国優勝を目指そう!」
おぉーっ!と、メンバーたちが叫ぶ。
私と理子も、それに続いた。
「青葉、ファイトー!」

