雨は君に降り注ぐ


 それでもやはり、逆転するには、少し無理に思えた。

 工藤くんも涼介先輩も、体力の限界が近いようだ。
 ボールさばきが、甘すぎる。

 しかし、それは、嵐が丘の選手にも当てはまるようで、あちらもあちらで、ミスが目立ってきた。

 残り時間、2分。

 スコアは、58対54。

 あと4点。

 その4点を入れるのがどんなに大変なことか、バスケ初心者の私にも分かる。
 やはり、追いつくのは無理か…。

 と、涼介先輩が、タイムをとった。

 工藤くんを呼び寄せて、小声で何か耳打ちする。
 工藤くんの顔が青ざめていくのが、観客席からもよく分かった。

 一体、何を話したのだろう。

 あっという間に、試合は再開される。

 その時、何が起こったのか、私には分からなかった。
 早すぎて、見えなかったのだ。

 いつの間にか、涼介先輩が、ダンクシュートを決めていた。

 歓声が巻き起こる。

 すごい。
 これが、涼介先輩の、本気。

 これで、あと2点。
 もう1本、シュートを入れれば。

 でも、残り時間は、すでに1分を切っている。

 やっぱり、無理か…。

「あと2点!何が何でも取り返すぞ!」

 工藤くんの爽やかな声が響く。

 まだ、あきらめないんだ。

 そりゃそうか。
 あと、52秒もあるんだもんね。

 まだ、可能性は、ある。