雨は君に降り注ぐ


「あきらめるなよ!」

 突然、体育館に、高く透き通った声が響いた。
 涼介先輩だ。

 体育館じゅうの人の視線が、青葉大学のベンチに注がれる。

「まだ試合は終わってない!あと10分もあるんだ、僕たちなら大丈夫さ。だから、最後まで、全力を出して挑めよ!」

 涼介先輩がこんなに声を荒げるところを、初めて見た。

 涼介先輩はきっと、青葉のバスケチームのことが、心から好きなんだ。
 だから、このチームを、キャプテンとして、勝たせてあげたいと思っている。

 だったら、私も、ちゃんと応援しなくちゃね。

 不可能だなんて、そんなはず、ないんだから。

「青葉っ!ガンバレーーーっ!!」

 私の声が、体育館に響く。

 一瞬の静寂の後、体育館は、たちまち青葉コールに包まれた。

 涼介先輩が一瞬、寂しそうに微笑んだように見えたのは、気のせいだろうか。

「俺たちも、最後まで本気でいくぞ!」

 嵐が丘のキャプテンが、叫んだ。

 観客席からも、嵐が丘コールが巻き起こる。

 体育館は、まるで、全国大会の決勝戦のような熱気におおわれた。

 すごいすごい。
 本当に、練習試合じゃないみたい。

 選手達の目は、皆本気だ。

 第4クオーターの開始を告げるブザーが、鳴った。