「練習、試合…?」

 すっとんきょうな声が出た。

 工藤くんは、爽やかに笑った。

「そ。練習試合って言っても、対戦相手は、あの嵐が丘大学なんだ。」

 嵐が丘大学。

 言わずとも知れた、バスケの強豪校。
 全国優勝6回の実績を持つ、バスケのエリート集団。

 そんなところと、練習試合?

「今回の練習試合は男子だけだから、結希ちゃんにはあんまり関係ないんだけどさ…。」

 工藤くんが、右手で首の後ろを押さえる。
 照れているときの、クセ。

「つまり、その試合に、工藤くんが出るんだね?」
「そうなんだ、それで、」
「じゃあ、私、観戦に行くよ!」

 私がそう言うと、工藤くんは首の後ろを押さえたまま、目を丸くした。

「え、いいの?」
「うん!応援するよ!」

 工藤くんは、全く邪気のない笑顔を見せた。

「本当?嬉しいなあ。じゃあ、今度の日曜日だから、よろしく!」
「工藤ー、いつまでサボってんだー。」

 涼介先輩が、工藤くんを呼んだ。

「じゃあ結希ちゃん、また。」

 そう言うと、工藤くんは去っていった。

「あんなに工藤くん優しいのに、もったいない。」

 ふいに、後ろから声がした。
 振り返ると、理子が立っていた。

 手には、スポーツドリンクを持っている。
 それを私に差し出して、理子は言った。

「はい。水分補給はしなきゃだめだよ。」
「ありがと、マネージャー。」
「にしても、そんなにいい男なんだ?」

 理子は、私の肩に肘を置いて、言う。

「その、一ノ瀬って男はさ。」