とりあえず、工藤くんとは、元の関係に戻ることができた。

 あとは、一ノ瀬先輩。

『君、その子の彼氏か何か?』

 そう言った時の一ノ瀬先輩の顔を、どうしても忘れられない。

 なんで?
 私はなんで、忘れることができていない?

 工藤くんの、彼女に間違われたことが、ショックだった。

 そうだ。
 私は、ショックを受けたんだ。

 なんで?
 なんで、ショックなんか…。

 そもそも、私は、先輩に会って、何を言うつもりなんだろう?
 またあやまるの?
 でも、あやまる理由がない。それどころか、

 話しかける理由もない。

 ううん、今、私には、一ノ瀬先輩に言いたいことがある。
 会って、話したいことがある。

『工藤くんは、私の彼氏じゃありません。』

 …でも、そんなことを言って何になるんだろう?
 私は、なんでそんなことを、先輩に伝えたいんだろう?

 考えたって、分からないよ…。

 でも、たった1つ、確かなこと。


 一ノ瀬先輩に、会いたい。