「あ、あのさ、結希……。」

 5月も後半に入り、桜の木がすっかり緑に染まった頃。

 大学生活にもすっかり慣れ、バスケも、工藤くんのおかげで、だいぶ上達した。
 サークルの新川先輩とも、最近になって、ちょくちょくおしゃべりができるような間柄になった。
 残念ながら、高井先輩とは、まだ挨拶しかしたことないけど…。

 そんなある日の昼休み、一緒に学食を食べていた理子が、重々しく口を開いた。

「ん?どした?」

 私が聞き返すと、理子は黙ってしまった。
 私と理子の間に、独特の緊張感が流れる。

「ゆ、結希ってさ……、」

 理子の声は、震えているようだった。

「…ゆっくりでいいよ?理子?」

 何を話し出すのか知らないけれど、あの理子が、珍しく元気がない。
 きっと、重要な話なんだ。
 緊張感が、高まっている。

 理子は、覚悟を決めたかのように、私の目をしっかり見据えると、早口に言い切った。

「結希って、涼介くんに気があったり、する?!」

 体の力が、一気に抜けた。

 え、何の話?
 気があるって、恋愛系のこと?
 てか、涼介くんって、何?

 言葉を失った私を見て、理子も言葉を失った。
 理子の眼のふちが、徐々に赤くなっていく。

 えっ、噓。
 私、理子を泣かしてる?
 なんで?!

「やっぱり、気、あるんだね?そりゃそっか。涼介くん、かっこいいもんね。」

 理子は、今にも泣きだしてしまいそうだ。
 話が、おかしな方向へと進んでいく。
 ……まずい。