雨は君に降り注ぐ


「吉岡さんを追いかけまわしてるその人が、3年前に瑞葵を殺した犯人ってことになるのか…。」

 涼介先輩は下唇を噛み締め、眉間にしわを寄せた。

「はい、多分。だから、その…瑞葵さんに過剰な好意を寄せていた、そんな人に、何か心当たりはあったりしませんか?」

 涼介先輩は、しばらく考え込んでいたが、

「瑞葵はモテたから…そういう人は、たくさんいたと思う。」

 と、力なく言った。

「とにかく、僕も色々考えてみるよ。今日は話してくれてありがとう。」

 涼介先輩は、柔らかく微笑んだ。

 なんだか、話が終わる方向で進んでいる。
 進まされている…?

 まあとにかく、今日は涼介先輩に相談ができてよかった。
 誰かに話すことによって、荷物を1つ降ろせた気分だ。

 少し、スッキリ。

 これで、涼介先輩に話したことによって、何か状況が変われば。
 涼介先輩が、何か瑞葵さんに関することを思い出せば。

 そうしたら、瑞葵さんを殺害した犯人が見つかるかもしれないし、私のストーキングも終わるかもしれない。

 あと残る問題は…。

 一ノ瀬先輩。

 そうだ、もともとは、一ノ瀬先輩の過去を知りたいがために、涼介先輩に、瑞葵さんのことについて訊ねたんだ。

 そういえば、このところ、一ノ瀬先輩と顔を合わせていない。
 偶然なのか、それとも、

 先輩が私を嫌って、わざと鉢合わせないようにしているのか。

 一ノ瀬先輩の過去を知ったからと言って、この状況が変わるわけではない。
 先輩に嫌われている、という状況が。

 …ダメだ。

 やっぱり、嫌われたくない。
 一ノ瀬先輩のことを思い出すだけで、胸が痛い。

 好きです。

 私、一ノ瀬先輩のことが、好きです。

 先輩はやっぱり、私のことが、嫌いなんですか?
 私は、先輩に会いたくて会いたくてどうしようもないです。

 先輩。

 先輩の笑顔が、優しさが、全てが好きなんです。



 一ノ瀬先輩に会うことができないまま、寒い冬がやって来る。