パシャッ
乾いたシャッター音。
私は足を止めた。
確証などない。
人で溢れかえったこの大通りで、誰が写真を撮ったかなんてわからない。
何を撮ったかなんて、わかるはずがない。
それでも、私は、
「撮られた。」
そう、思った。
撮られた。
私を、写真に。
もちろん、これはただの、私の勘。
でも、わかる。
絶対、私は、
「撮られた。」
口にしてしまうと、その恐怖は形を持つ。
私はその場に立ち尽くしたまま、動けなくなってしまった。
冷たい雨が、容赦なく私の頬を濡らす。
私の脇を通り過ぎていく人たちが、怪訝そうに私を見る。
でも、私にはもう、そんな視線は気にならなくなっていた。
怖い。
怖い。
撮られた。
どうすればいい?
また走るのか?
無理だ。
振り切れるはずがない。
逃げられない。
視線が、動き始めた。
あのストーカーが近づいてくる。
来る。
逃げなきゃいけない。
でも足が動かない。
そうしている間にも、視線は確実に、私に向かってきている。
誰?
誰なの?
どうして私を追いかけるの?
…
……
助けて。
誰か、助けて!
「ねえ、君。」
大きな手が、私の肩に置かれた。

