雨は君に降り注ぐ


 翌日。

 私は、体育館で、涼介先輩を呼び止めた。
 話したい事がある、と伝えると、彼は柔らかい微笑みを浮かべて、大学校内の図書室まで一緒に来てくれた。

 体育館を出る直前、理子と目が合った。

 彼女は不思議そうに、でも少し寂しそうな目で、私と涼介先輩を見つめていた。

 …もしかしたら、何か勘違いをされたかもしれない。
 後で理子とも話をしなくては。

「…今日はどうしたの?」

 図書室の隅の席に着くと同時に、涼介先輩が訊ねた。

「私昨日、涼介先輩に紹介していただいた、日向美波さんに会ってきたんです。」
「そっか。それで、どうだった?」

 私は、一瞬黙った。

「…あの、私、瑞葵さんは自殺ではないと思うんです。」

 唐突な物言いに、涼介先輩は面食らったような表情を見せた。
 が、すぐにいつもの柔らかい笑顔に戻り、

「それは、僕もずっと考えていたことだよ。…瑞葵が自殺なんてありえない。」
「…はい。それで私、瑞葵さんは、…殺されたんだと思うんです。」

 涼介先輩の顔から、表情がなくなる。

「なんで、そう思うの?」
「実は昨日、美波さん以外にももう1人、入野遥さんという方にも、お会いしたんです。」

 涼介先輩は、顔をこわばらせたまま、訊ねた。

「…聞いたの?彼女の、お兄さんのこと。」

 私は、首を縦に振る。

「はい。全部、聞いてきました。」

 涼介先輩に顔に、表情が戻った。
 彼は、ふっと小さなため息をついた。

「彼女のお兄さんの言っていること、僕は本当だと思ってる。瑞葵が、ストーカーに突き飛ばされて、…死んだこと。」

 私は、力強くうなずいた。

「それで、ここからが本題なんですけど。」
「うん?」
「私、瑞葵さんを追いかけまわしていたストーカーが、この大学にいると思うんです。」

 涼介先輩の顔から、再び表情が消えた。