すると、今まで黙っていた遥さんが、突然口を開いた。
「あっ、あの…。」
その顔は青ざめていて、唇はわずかに震えていた。
「み、瑞葵をはねた車のことなんだけど、」
涼介先輩からも聞いた、大型の配送トラックのことだ。
「あれを運転していたのって、」
遥さんの声が、だんだんに小さくなっていく。
美波さんは、哀れむような目つきで、遥さんのことを見つめていた。
「うちの、兄、なんだ…。」
気まずい沈黙が流れる。
美波さんは、目を伏せてため息をついた。
遥さんは、まだ唇を震わせていた。
「え、それって、」
私は驚きのあまり、目を白黒させた。
遥さんは顔を上げ、私の目をしっかりと見据えた。
震える声で、ゆっくりと語り始める。
「うちの兄、当時配送のバイトをしていて、あの夜、夏祭りの夜にも、配送用のトラックを運転していた…。そしたら、ある交差点にさしかかった時に、突然、赤信号にもかかわらず、浴衣姿の女の子が飛び出してきて、それから…。」
遥さんの頬を、一筋の涙がつたう。
美波さんが、たくさん存在する雪立高校の卒業生の中から、彼女を選んで呼び出したのは、この話を聞かせるためだったのか…。
「あの事故で、瑞葵は即死、うちの兄も重傷を負って、しばらく入院していたんだけど、」
遥さんは涙をぬぐって、改めて、私と目を合わせた。
「退院してから、兄がずっと、今もずっと言い続けていることがあるの。あの子は、瑞葵は、自殺なんかじゃ絶対ないって。」

