美波さんは、おしとやかで、柔らかい雰囲気を持った人だった。
小柄で細く、いつも穏やかな笑みを浮かべている、言わば『癒し系』の人。
彼女は、高くも低くもない、聞き心地のいい声で言った。
「瑞葵は、元気で活発な子でした。」
そこは私に似ていないようだ。
「いつも笑顔で、自分より他人のことを1番に考えてしまうような子で、彼女がクラスの王子様的存在であった一ノ瀬君と付き合い始めたことも、当然のように思えました。」
王子様…。
一ノ瀬先輩、相当モテたんだろうな。
「本当にお似合いの2人で、美男美女だったこともあって、学校で1番有名なカップルでした。2人の仲も順調で、喧嘩をしているところも見たことがありません。」
美波さんの話を聞いているうち、胸がチクチクと痛み始めた。
「あの、瑞葵さんは美波さんに、涼介先ぱ…お兄さんの話をしたこととか、ありませんでしたか?」
美波さんは、にっこりと笑った。
「美波でいいですよ。瑞葵からお兄さんの話を聞いたことは、あまりないですね…。瑞葵は、お兄さんのことが、嫌い…だったみたいです。」
やっぱり、嫌っていたんだ。
でも、なんで。
「私が知っていることはこのくらいで…。すみません、親友って言っても、そこまで詳しく知っているわけじゃないんです。」
美波さんは、申し訳なさそうに頭を下げる。
私は慌てて、両手を顔の前で振った。
「いえっ!こちらこそ、いきなり呼び出して、色々聞いたりしちゃって、ごめんなさい!」
美波さんは、ゆっくりと顔を上げた。
「あの、今呼べる人だったら、瑞葵と同学年だった雪立高校の卒業生、ここに呼び出しましょうか?」
願ってもみない話だった。
「いいんですか?ぜひ!」
思わず身を乗り出した私に、美波さんは苦笑した。

