雨は君に降り注ぐ


 家に入ると、私はベッドへ直行した。
 思い切りダイブし、枕をひっつかんで抱きしめる。

 白いテーブルには、真新しい封筒が置かれていた。

 確かに鍵は閉めたはずなのに…。

 今更、その手紙の存在に恐怖は感じない。
 開けて読もうとも思えない。

 私は、今日、涼介先輩から聞いたことを思い出していた。

 涼介先輩の妹であり、一ノ瀬先輩の元カノで会った瑞葵さんは、夏祭りの夜、自ら車道に飛び込み、トラックにはねられて死んだ。

 彼女は死ぬ1週間前に、涼介先輩に、ストーカー被害にあっていることを相談していた。

 そのストーカーは、おそらく、黒フードの男。

 根拠はズバリ、無い。

 でも、分かる。
 根拠がなくたって、分かる。

 瑞葵さんのストーカーと、私のストーカーは、同一人物だと。

 黒フードの男が私を追い回している理由は、おそらく、私の顔が瑞葵さんの顔にそっくりだからだ。
 私に、瑞葵さんの影を重ね合わせているのだ。

 そんな仮説を立てて、私はため息をついた。

 瑞葵さんが自殺した理由は、多分それ。
 黒フードの男に追い回されていたから。

 おそらくあの夏祭りの夜も、瑞葵さんはストーカーに追いかけまわされた。

 パニックに陥った瑞葵さんは、気づかぬうちに、車道に飛び出していた。
 もしくは、車道に飛び出して逃げようとしていたところに、運悪くトラックが突っ込んできた。

 もしくは、黒フードの男が、瑞葵さんを車道へ突き飛ばした。

 私の腕があわ立つ。

 そうだ。
 瑞葵さんは、黒フードの男のせいで、自殺したんだ。
 いや違う。

 瑞葵さんは、黒フードの男のによって、殺されたんだ。