雨は君に降り注ぐ


 涼介先輩は、分かりやすく困惑の色を浮かべた。

「さっきも言ったけど、瑞葵とは、あまり仲がいいわけじゃなかったんだよ。」

 彼の笑顔から、再び柔らかさが消え、代わりに悲しみが浮き上がってくる。

「ああでも、1回だけ、相談をされたことがあるかな。」
「それって、いつですか?」
「確か、夏祭りの1週間前、くらい…?」

 それだ。
 瑞葵さんが自殺した理由は、多分それ。

 まったくもって確証はないが、私の勘がそう言っていた。

「それって、どういう、」
「ああ、それはね…。」

 涼介先輩が、わずかに身を乗り出す。

「瑞葵は、ストーカー被害にあっていたらしいんだ。」

 『ストーカー』。
 そのワードに、思わず身構えてしまう。

「瑞葵、かわいいじゃん?」
「ええ…。」
「多分、それで狙われたんだと思う。」

 私は、先程見せてもらった瑞葵さんの写真を、思い返していた。

 私に、生き写しと言っていいほどそっくりな顔。
 彼女は生前、それも自殺の直前、ストーカー被害にあっていた。

 まさか。

 嫌な予感が、私の脳内をかすめる。

「警察には、…届けなかったんですか?」
「瑞葵が嫌がったんだよ。大事にしたくないって。」

 確かに、その気持ちはよく分かる。

「その、そのストーカーの特徴とかって、分かったりします…?」
「え?特徴?」

 涼介先輩は、再び腕を組んで考え込んだ。

「あっ、そういえばね、」

 何かを思い出したかのように、涼介先輩は手を叩いた。
 私のうなじを、冷や汗がつたう。

「そのストーカーはいつも、黒いフードをかぶっていたらしいよ。」

 私の顔から血の気が失われていくのが、自分でもよく分かった。