「でも、結希が陸上やってたなんて知らなかったなあ。中高ってことは、6年間やってたってことでしょ?将来陸上選手、目指してたとか?」
私は苦笑した。
「ううん。趣味でやってただけだし。あと、正確には4年間。高2に時に退部しちゃったから。」
ふうん、と、興味を無くしたように相づちを打つ理子。
この子は、どんな感情でも顔に出る。
「結希の将来の夢って、何?」
唐突にそう聞かれて、私は少し戸惑った。
「将来の、夢…。」
私にだって、将来の夢くらいあった。
いや、今もある。
小さいころからずっと持ち続けてきた、変わらない夢が。
でも、その夢は、誰にも打ち明けたことがない。
もちろん、親にも。
…怖かった。
その夢を誰かに話した時、バカにされるんじゃないかって。
でも、理子なら、この子になら、話してもいいかもしれない。
「歌手だよ。」
「え?」
「私の将来の夢。歌手。」
しばしの静寂。
……やっぱり、バカだって、思われちゃったのかな………。
「いいじゃん!」
「えっ、」
予想外の反応に、私はまた戸惑った。
「いいじゃん、歌手!ステキだよ!結希、高くていい声してるもんね!うち、結希の夢、応援するよ!」
理子が目を輝かせて喜んでいる。
やっぱり、いい子だ。
私は、理子のこういうところが好きだ。

