「ごめん、結希。」
体育館を出て、2人で廊下を歩いていると、理子が言った。
「え、何が?」
「さっき、その、勝手に入会決めちゃって。」
なんだ、そんなことを気にしていたのか。
すっかり落ち込んだ顔をしちゃって、ほんと、かわいい。
「いいよ。バスケにはちょっと興味あったし。」
「うん。ありがとう。」
…沈黙。
なんだかよくわからないけど、気まずい空気になってしまった。
この空気を変えたくて、私は後先考えずに口を開いた。
「さっきの、キャプテンの人、斉藤先輩…?だっけ。すっごいイケメンだったよね。この前、理子の言ってた理想の人、と、ほぼ条件一緒っていうか、同一人物?っていうか、なんか、ほんと、かっこよくって、うん。」
ああ、私、何言ってんだろ。
自分で言っていて意味不明だ。
「ね!やっぱりそう思うよね!すっごいかっこよかった!」
意外にも、理子は食いついてきた。
「絵に描いた王子様みたいだった…」
理子が、うっとりと手を組みながら言う。
どうやら自分の世界に入ってしまったようだ。
「顔もイケメンで、背も高くて、声も高くって…。外見は完璧ね。優しそうだったし、ついに、運命の人、発見かなあ…。」
運命。
私にもいつか、そんな出会いがあるのかなあ。

