雨は君に降り注ぐ


 急に、心細くなってきた。

 嫌だ。
 このまま1人でいたくない。
 1人になりたくない。

 ずっと1人でこの部屋にいたものなら、本当におかしくなりそうだった。

 嫌だ。
 私を置いていかないで。
 誰か、そばにいて。

 誰でもいい、寄りそってほしい。

 私は、スマホに素早く文字を打ち込む。

『理子、今から会えな _ 』

 そこまで打ち込んで、我に返った。

 現在時刻は、先ほども確認したとおり、午後9時20分。
 こんな時間に未成年の女子を呼び出すなんて、常識外れもいいところだ。

 私は、打ち込んだ文章を全て消すと、スマホをズボンのポケットに押し込んだ。
 そして、パーカーを羽織ると、玄関の鍵を開ける。

 特に、行く当てはなかった。

 でも、外に出た方が、今1人で家にこもっているよりも、よっぽどマシだと考えた。

 真夏の夜は、じめじめしていて息苦しい。
 それでも、あの部屋よりは遥かに落ち着いた。

 外は、雨が降っていた。
 それほど強くはないが、弱いとも言い難い雨。

 一瞬、傘を取りに戻ろうか、迷う。

「嫌…。」

 やめておこう。
 孤独が詰まったような部屋に戻る勇気など、今は持てない。

 私はパーカーのフードをかぶると、夜の雨と闇の世界へ足を踏み出した。