雨は君に降り注ぐ


 小さいころから、走ることが好きだった。

 陸上部のメンバーは、私のことを温かく迎えてくれた。
 びっくりした。
 だって、どうせ、いじめられるものと思っていたから。

 私は、陸上部で、心置きなく走れるようになった。
 走っているときは、嫌なことを全て忘れられた。

 陸上部だけが、私の唯一の居場所だった。

 私の足は、確実に早くなっていった。
 ちょっとした大会で優勝したこともある。

 思えば、あの手紙をよこしたストーカーから逃げ切ることができていたのも、中学の時つちかっていた脚力があったおかげかもしれない。

 どんなにいじめが辛くたって、私には陸上があったから、だから、乗り越えることができていた。

 でも、そんな日々が続いたのは、中学の3年間だけだった。

 高校に進学してから、私の、本当の悪夢が始まった。