雨は君に降り注ぐ


 …なんて、なんて自分勝手な。

 私は、充分愛されていたというのに。
 母にも、父にも。

 両親には、桜庭学園でのことは、詳しくは伝えていない。
 要するに両親は、いじめの事実を知らないのだ。

 両親には、いじめられていることを知られたくなかった。
 多分、子供独特の、プライドからくるものだと思う。

 でも、それと同時に、私は気づいてほしかった。
 何も言わなくったって、母に、父に、私が苦しんでいるのだということを、察知してほしかった。
 そうして、自分のことを、もっとちゃんと見てほしかったんだ。

 でも、両親は気づかなかった。
 いじめの事実に。
 私の心境に。

 …本当に自分勝手だ。

 両親のことを自分から突っぱねておいて、都合のいい時に助けてもらいたいと思う。
 なんてわがままな考え。

 私は、母のことが嫌いだった。
 でも母は、私のことを愛していた。

 知っていたのに、分かっていたのに。
 私は勝手に母と距離を置いて、1人暮らしをするんだと家を飛び出して。

 私、親不孝者だ。

 母は、私が出て言った時、どのくらい傷ついたんだろう。

 私があの時、家を飛び出してなければ。
 青葉大学に進学をせずに、1人暮らしを始めずにいれば。

 私が、母の病気に、もっと早く気づけていたかもしれない。

 そうしたら、母は助かっていたかもしれない。
 今も私の隣で、穏やかに笑っていたかもしれない、のに。

 私のせいだ。

 今更こんなことを思っても仕方がない。
 どれだけ反省したって、母は帰ってはこない。

 分かっているけど、そう考えずにはいられない。

 全部私のせいなんだ、と。