雨は君に降り注ぐ


 小学4年の時のあの事件を境に、私は、努力することをやめていた。
 つまり、自主的に勉強する意欲を、失くしていたのだ。

 入学してからしばらくすると、当然私は、桜庭学院の学習スピードに追い付けなくなっていった。
 それに気が付いた時には、もう遅かった。

 私は、確実に、取り残されていった。

 また、先ほども言ったとおり、私の家庭は、決して裕福ではない。
 月にもらえる小遣いも少ないし、買える商品も限られていた。

 小遣いが少ない、というのは、子供にとっては大問題だ。
 子供の人間関係は、小遣いの金額だけで、残酷なほどに左右されていく。

 当時、小遣いが少なかった私は、ちゃんとした人間関係を築くことができなかった。

 頭は悪いし、人付き合いは悪い。

 私がいじめの対象になるまで、たいして時間はかからなかった。

 辛い。痛い。苦しい。
 毎日、毎日。

 女子校ということもあってか、そのいじめはなかなか陰湿なものだった。
 当然、教師は気づいてはくれなかった。
 助けてなど、くれなかった。

 何度も、学校に行きたくないと思った。

 でも、やめることなどできなかった。
 1日でも学校を休めば、親に何を言われるか分かったものではない。

 私は確実に追い詰められていった。
 精神的にも、肉体的にも。

 誰か、助けて。

 そんな時だった。
 私が、陸上に出会ったのは。