翌日。

 夏休みまっただ中だが、私は、サークルに顔をのぞかせることにした。
 あれから、新川先輩がどうなったのかも知りたかったし、ただ純粋に、サークルの皆に会いたかった。

 大学校内に入り、まっすぐ体育館に向かう。
 と、廊下で、ある人とすれ違った。

 目が合うと、彼の方から笑いかけてくれた。

「一ノ瀬先輩…。」

 なぜ、一ノ瀬先輩が、夏休みに大学に来ているのだ。
 どこのサークルにも属さない先輩は、特に大学に用など無いはずでは…?

 その質問を投げかける前に、一ノ瀬先輩が、自ら答えてくれた。

「今日は、涼介さんに挨拶をしに来てたんだ。」

 涼介先輩に…?

「え、なんで、」
「君は?何しに来てるの?」

 この質問も、一ノ瀬先輩にさえぎられてしまった。

 なぜ、涼介先輩に会いに来ていたのか。
 ものすごく気になるけど、その疑問も、先輩の優しい笑顔には勝てやしない。

「私は、普通に、サークルの活動に参加しに来ました…。」
「ああそうか、君、バスケサークルだったね。」

 ところで先輩、私の名前、覚えてますか?

「そういえば、」

 一ノ瀬先輩が、何かを思い出したように、手を叩いた。

「3年の新川さん、青葉、やめるみたいだよ。」
「え、」

 何、それ。

 新川先輩が、大学をやめる?

 なぜ?

 昨日のことがあったからか。
 私も、原因の1つなんだろうか。

「なんで、やめるって、知ってるんですか?」
「さっき、廊下で新川さんとすれ違って、少し話したんだ。今日は退学届けを出しに来たって言ってたから。」

 なんで、新川先輩の名前は覚えているんですか。
 …いや、今、そんなことはどうでもいい。

 なぜ新川先輩は、退学届けなど出しに来たのだろう?