雨は君に降り注ぐ


「ふざけないでください!」

 反射的に、そう叫んでいた。

 …ああ、私、今、怒っている。
 目の前にいる女子たちと、新川先輩に対して。

 そして、高井先輩に対して。

 怒ってるんだ。

「いつからこんな事をやっているんです?…くだらない。こんな事をされて傷つく人の気持ちを、少しでも考えたことがあるんですか?!」

 新川先輩は何も言わず、私の叫びを聞いていた。
 しかしその目は、相変わらず、私と理子を冷ややかににらみ付けていた。

「高井先輩も高井先輩です。辛いなら辛いって、助けてって、正直に言えばいいじゃないですか!あんな遠回しに拒絶するなんて、あんまりですよ!」

 最後の方は、ほとんど涙声になっていた。

 こんなところで泣いちゃいけない。
 そう思うのに、色々な感情が自分の中に入ってきて、涙を制御することができない。

「…言いたいのはそれだけ?」

 新川先輩の冷たいことで、我に返った。

「…え、」
「言いたいこと言ったら、もう帰ってくれない?私たち、これからまだ、することがあるから。」

 何を言ってるんだ、この人は。

 つまり、私にこのまま、帰れと?
 本気で言っているのか?

「わ、私が言いたかったことは、」
「いじめを今すぐやめろ、さもなきゃ言いふらすぞ、的なことでしょ?」

 新川先輩の言葉が、私に突き刺さる。
 言葉に詰まった。

「誰に言いつける気?斉藤くん?それとも教授?ムダよ。誰に言ったって、証拠がないじゃない。優等生、新川仁菜の像は、ちょっとやそっとじゃ崩れないわよ。」